苦くて、甘いパティスリー |
こんにちは、三富です。
最近、苦みをきかせたパティスリーが気になっています。
「苦い」と言うとネガティブなイメージがありますが、この場合は、焙煎したコーヒーの香ばしさから生まれる心地よい苦み、そしてフルーツのフレッシュな苦みです。
先日オープンした『ガトー・トゥーミューGâteaux Thoumieux 』で一番気に入ったのも、“焙煎コーヒーのエクレアEclair au café grillé”。“焙煎”とあえて強調しているところも、期待を高めます。甘さはとにかく控えめ。火でじりじりとローストしたコーヒーの苦み、酸味が、口の中に広がって、まさにコーヒーをそのまま凝縮させた味わいでした。
同じ感覚を味わったのは、『パティスリー・デ・レーヴ Pâtisserie des Rêves 』のコーヒー・エクレア。なめらかな酸味が特徴といわれるエチオピアのモカシダモ産のコーヒーのエスプレッソを使っているそう。
チョコレートのデザートでは、カカオの原産国を明記したものがたくさんあるけれど、これからはコーヒーも、原産国や種類を限定したデザートがさらに登場してくるかも。このところパリでは、豆の焙煎から手がけるこだわりのコーヒーショップが増えているので、飲むコーヒーだけでなくて、パティシエとのコラボレーションも、もっと見たいものです。
コーヒーに続く苦みは、グレープフルーツ。
驚かされたのは、日本の食材をフランスに広めるために、11月23日にエコール・アラン・デュカスで開かれた「A la rencontre du Japon 日本に出会う」で、ピエール・エルメさんが発表したデザートでした。
赤い果肉のグレープフルーツに、なんとワサビのジュレとギモーブを重ね、飾りはグリーンピース! ワサビとグリーンピースの、ちょっと青臭いような強烈な個性の味を、グレープフルーツの酸味と甘さ、そして軽い苦みで、さらりとまとめているんです。
そして、パティスリーに燻製香も登場しました。
『パティスリー・デ・レーヴ』の2013年クリスマスのブッシュ・ド・ノエルのひとつが、燻製プラリネです。フランス菓子で燻香を使うのは、これまでなかったとのこと。同店のレシピをプロデュースしているのは、ティスリーにハーブなどの塩味を取り入れた先駆者フィリップ・コンティシーニさんですから、納得です。
© Pâtisserie des Rêves
燻製プラリネは、日本料理にインスピレーションを受けたそう。同店が初めて燻製プラリネを発表したのは昨年3月、京都のお店で。「祇園さゝ木」の佐々木浩さんとのコラボでした。
私は一足先に、発表会で燻製プラリネのブッシュ・ド・ノエルをいただく機会に恵まれました。最初に口の中でほんのり甘いプラリネとクレーム・シャンティイがとろけたあと、燻製プラリネの香りが少しずつ現れる。その後味は、豆をあぶって焦がしたときの、ほんのりとした苦味。最後は、フルール・ド・セルとヘーゼルナッツのかりっとした生地が味をぐっと引き締める……。ワインにも合うかな、などと考えをめぐらせながら、余韻は続きます。
こうしたデザートを味わった後の感激をどう表現するべきか、と考えていたとき、知人がこんな一言を発しました。「セクシーなデザートだ」と。
そうです、甘さの中に現れる苦みや香ばしさは、あくまで控えめ。だからこそなんだか気になって、感性に訴えてきて、うっとりと余韻が残るのでは?(コーヒーの場合はカフェインの作用でドキドキしているのかも?)
前述した燻製プラリネも、まさに大人の味。ちなみに、子供向けとして、燻製させていない普通のプラリネを使ったブッシュも発売されるそうです。