パン・ドゥ・ミと食パンに求めるもの |
こんにちは。三富です。
長方形の白いパン『パン・ドゥ・ミ(Pain de mie)』。一般的に“食パン”と訳されています。「ミ」はパンの身のこと。バゲットなどと比べて、やわらかい身が多いからなのですが、日本語と同じ発音とは、食パン大好きな日本人とフランスの不思議なご縁なのでしょうか。
ですが、「フランスの食パンはおいしくない!」という日本の方が多いんですね。私もそうでした。
もともと、朝食に食べるというより、クラブサンドイッチやクロック・ムッシュー、カナッペなどのためにつくられていて、大きさも、日本の一般的な食パンの半分くらい。薄くカットしてトーストすることが多いから、身がもちもちしている必要はあまりないのですね。焼いてさくっと食べられる食感の方が、むしろ最適。
フランスで食パンに近い味と食感を求めるなら、スーパーで売っているharry'sなどのメーカーの袋入り食パン。harry'sはフランスのメーカーですが、アメリカの食パンがベース。耳なしのパン・ドゥ・ミも販売しています。
※パリで日本風の食パンをつくって販売していらしゃる日本の会社もあります。
というわけで、パン・ドゥ・ミと食パンは、似て非なるもの。
どちらがおいしいかと比べるというより、違うパンと考えてあげてほしい。どちらも一番おいしい方法で、いただきたいものです。
ただフランスのパン・ドゥ・ミを食べて思うのは、粉や乳製品の味が濃いからか、味の余韻が長いんです。
先に写真をお見せした「ピシャール」のものは、日本の食パンに近い、もちもち感がすばらしい。山型に焼いたものと蓋をして焼いた2種類で、レシピはまったく同じだそうですが、山型の方が蓋をしていない分、より身が軽い感じ。
下の写真はパン・ドゥ・ミの断面。ぱさぱさしているように見えますが、実はもちもちした食感。大きさは幅8cmくらい。
次の写真は、パリ郊外ブローニュ・ビランクール市に店を構えるティエリー・ムニエさんのパン・ドゥ・ミ。もちもちの身は、日本のパン市場に詳しいムニエさんならでは。
こちらは「ポワラーヌ」のパン・ドゥ・ミ。使っている粉のせいで身は灰色がかっていて、素朴な味。手に持つとずっしり。もちっとした弾力がありますが、しっかりとかんでゆっくり食べたい。
そして、昨日初めて食べた「134 r.t.d」のパン・ドゥ・ミは、15cm四方の大きなサイズ。
ブリオッシュのように黄色くて、カットすると、さらさら落ちてくるくらい乾きぎみの身。チョコレートのペーストやジャムをたっぷりつけて食べるのがいいかも。
※このお店はバゲット・トラディションがおすすめ。かりかりの皮がすばらしい。
最後にパン・ドゥ・ミに関するデータを。
パンについて科学や栄養面から調査が行っているObservatoire du Painによると、 フランス人のパンの消費量は1日138g(1950年代の半分)。バゲットがもっとも多く、次がバゲット・トラディション(規定に沿った伝統粉を使ったもの。通常のバゲットより少し高い)で、あわせて80%以上。パン・ドゥ・ミは11%で、おやつや朝食に時々食べる程度。その9割以上が、パン屋さんではなくスーパーで購入されているそうです。
ブーランジェによって味も食感も多彩なパン・ドゥ・ミ。バゲットの影に隠れた存在でいるのはもったいない! もっともっとパリのパン・ドゥ・ミを食べ続けます。
Boulangerie Pichard : 88 rue Cambronne, 75015 Paris
Thirry Meunier : 8 place Jules Guesde, 92100 Boulogne Billancourt
Poilâne : 8 rue du Cherche-Midi, 75006 Paris
134 r.d.t Boulangerie : 134 rue de Turenne, 75003 Paris